「よくわかる 学級ファシリテーション③ 授業編」の書評

 
僕はいわゆる「教育本」の類いを基本的に読みません。でもこの著者である岩瀬直樹さんの実践には目を見張るものがあり僕も一緒に実践をすることで多くのインスパイアを受け、自分が高まったことを感じています。また岩瀬さんと二人三脚で温かな子どもたちの人間関係づくりを行っている、ちょんせいこさんのホワイトボードミーティングからも多くのことを学びました。そのお二方が3冊目となる学級ファシリテーションの最新版を出版なされました。私のような者が書評を書くなんておこがましいのだけど、この本のちょっとした参考に読んで欲しいと思います。
 
 この本を読んで最初に感じたことは、これは読み流すタイプの本なのではなくて、教室において何度も読み返し、確かめながら「読み込んでいく」という辞書のようなものなんだなぁというものです。ページ数は317ページにも及び、これまで数年間蓄積されてきたもの全て注ぎ込んだのだなと分かります。
特に彼らがこの本で基盤としている「温かな人間関係の中の豊かな言語活動」は今、そしてこれらの教育には絶対に欠かすことのできないものであることは間違いなく、特に若い先生にとってどのような教室づくりを行っていったらよいかを学ぶにはとてもよい内容と言えます。随所に具体的な実践例や失敗からの立て直しの道筋が記載されているのも心強いと言えます。また、信頼ベースの学級が立ち上がるまでのステップを5段階として構成し、誰でも無理なくステップアップできるような道筋が示されているのも心強いと言えます。
 この本がこれだけのボリュームを有しているのは「はじめに」にも述べられているように、学校のコアとは「授業」だからです。学校の中の8割以上を占める授業の中で、彼らの実践をどのように生かしていくことができるのか大変興味深く読ませていただきました。それらはこの本の終盤にさまざまな教科や単元での実践例が記載され、イメージしやすくなっています。
 「子どもたちとの関係が最近ぎくしゃくしているな」「子どもたち同士の関わり合いを大事にした授業をしたい」そんな時にはこの本を何度も開きながら自分の実践を振り返るとよいと思います。
 最初に述べたようにこの本は、教育書というのより実践の辞書と言った方がいいものです。ですから最初から一つ一つを全て読み込むというよりも、この本の持つ「芯」の部分、まずは「対話型読み聞かせ」と「振り返りジャーナル」を基盤にして、そこから様々な実践を付け加えていった方がよいと思います。特に若い先生にとってはこの本を読むと膨大なファクターが絡み合っていて、それを一つ一つ整理して自分に組み込まないと何だから分からないミックスジュースになってしまう恐れがあります。
 最後に。この本に第4弾があるかどうかは分かりません。ですがもしそうしたチャンスがあるのであれば、中学校編や小学校低学年さらには幼稚園などの授業編も読んでみたいなと感じました。
 
何だかうまくまとまっていませんね(笑) 僕はこの本は教室のいつでも出せる場所に置いて日常的に使いたいと思います。辞書としてね。