ICTは必要なのか

昔はOHP、近年はプロジェクター、最近では電子黒板。新しいテクノロジーが開発される度に教育現場にもどんどんこうしたものが普及してきました。ただ教育行政というものは予算の絡みもあって大抵かなりそうした機器の価格がこなれてきてからの導入となりますから世の中から何歩も送れて現場に導入されてることになります。
 
さて、ICTは授業に必要でしょうか? 私は「現状の授業ならほとんどの場面で必要ない」と考えています。分かりやすくするために使っているのに結局子どもにとって分かりにくい、時間のロスが多いなど様々な欠点があるということを私たちはもっとしらなければならないと思います。
  
情報が多いと言うことはそれだけ「ノイズ」も多いということを知らなければなりません。子どもにとって求めるもの(課題など)を明確に持っていないまま、ノイズの多い情報を子どもたちに示しても子どもたちはどこをどう見てよいか分かりにくいのです。
 
多くの場合、こうしたことに子どもが振り回されてしまっています。「使わなければ」もっと楽に理解できるのに使うことで理解に時間がかかったりすることもあるのです。つまり使いことでマイナスにもなるのです。
 
我々(子どもの未来を創る会)も昨年度パナソニック教育財団よりICTについて多額の助成金をいただきました。我々の戦略は、ICT(Information and Communication Technology)という言葉の通りに、子どもたちのコミュニケーションツール(授業の内容ではなく、プロセスを共有化する)として活用しています。そして今年度はそれらを電子ブックとして共有化を図ろうとしています。
 
日本の教育にとって問題なのはICTのプラットフォームがないということです。教材会社・メーカーは多額のお金を投入して、子どもたちに興味を引かせるような色とりどりで、動きがあり、分かりやすいものを制作します。しかし、そうしたものは陳腐化するのも早いのです。そして多くの教師は準備もめんどくさいのでそんなものは通常使いません。特定の教師が使って終わりなのです。
 
でもその突破口がappleの「ibook author」にあると思います。これまでも相当力のある先生は、powerpointkeynoteを使って同じようなことをやっていたとは思います。でもappleは「誰でも」電子ブックを作れる環境を用意してきました。しかも「無料」で。
 
もし、日本でこうしたプラットフォームが作成され、開放されていれば、日本中の教師が制作にあたることができ、無償でアップしてくれることでしょう。メーカーが作る数百倍、数千倍の速さと量でね。結果、それを使うタブレットなども売れることになります。でもこうしたものは、appleは例外にして、一企業ではなかなかできないものです。こうしたことは文科省が世界に先駆けて(こうしたものはスピードが大事ですよね)プラットフォームの制作していく必要があるのではないかと思います。
 
でも残念ながら現状では日本にはそうしたものはありません。なので現状では「ibooks author」でやらざるをえないのですが、いつかそうした日本のプラットフォームが生まれることを願ってやみません。
 
 

追記
 
私も郡山市の理科のデジタルコンテンツに関わらせていただきましたが、上記のような欠点もあるので子どもも向けのコンテンツの開発から、教師向けのコンテンツに切り替えました。残念ながら市外からはアクセスすることはできないのですが、本市の教育コンテンツの「バーチャル理科室」は日本でも最高レベルのものに仕上がっていると思います。(毎年ちょっとずつバージョンアップしています)