全国学力テストを考える

僕は全国学力テストのテストの内容や質、アンケート調査などについては何の不満もありません。よく出来た問題だと思うし、A問題やB問題という形で子どもの到達度を測り、今後の教育の指標にしていくことはとても大事なことだと考えています。
 
しかし、そうした目的とは別に「都道府県対抗学力大会」となっております。学力テストのわずかな数値の変化に一喜一憂し、限りない競争に突入しております。僕はその大きな原因を程度の低い新聞やテレビの報道にあるとみています。どのメディアも都道府県民を引きつけようと、センセーショナルに書き立てます。ビリにでもなろうものなら、自分の県はどれだけ教育の水準が低いのかと子どもからお年寄りまで嘆かなければならないほどに。
 
でも数値をみると、僕は日本の教員のがんばりを感じます。全国47都道府県があってよくあれだけ小さな範囲で学力の揺らぎが収まっていると感心します。世界の中でも揺らぎの少なさは日本の教育の誇れるところです。それなのに静岡の知事などは、学力の低い学校名を明らかにしました。(すったもんだで「高い」学校を明らかにしましたが結果的に同じことですよね)
 
「学校ごとの平均値」なんて統計学的に意味がないことを知っていれば、もうちょっと数学ができれば、静岡の知事のような話は出てこないのです。大都市をのぞけば、今日本の多くの学校は1学年100人以下です。地方の県だと1学年1クラスなんてざらにあります。クラスは最大で40人ですから、年ごとにメチャメチャに揺らぎは大きいのです。ですから「全国学力テストの目標数値を各学校で設定する」なんて意味はないし、毎年設定通り学力を上げるなんてできないのです。
 
それでも無理に学力テストの結果を引き上げるとしたら、練習問題を何度もやって、テスト対策していくしかないのです。今ではどこの都道府県でもそうした取り組みを行っていますよね? 
 
でも、これが本当に全国学力テストの目指した姿なのでしょうか?
 
僕は全国学力テストを取り巻く、メディア、そして教育行政があまりにも幼すぎたと思っています。これはまるで「総合的な学習の時間」や「ゆとり教育」のように、その理念を掲げた人の考えとは全く別方向に走っていってしまったようなものです。
 
国学力テストを結果を引き上げるためには一度類似問題、特にB問題のような問題は答え方そのものが分かりにくいので、過去問など一度練習するだけでも結構数値は伸ばせます。でも、そんなことして数値を伸ばしたって、子どもにはよいことはすくなく、大人の都合にとってよいことの方が大きいことでしょう。
 
これからも今のような学力テストの環境であるならば、僕はその実施には反対です。学力テストから見える授業の問題点、そして日本の教育の問題点について、我々は本気で取り組んでいく必要があるのだと思います。そんな競争している場合じゃございません!