未来を創る食育

私はTPPには基本的に賛成です。関税撤廃による農業のダメージは相当あるだろうと考えられているのですが、保護がなければ生きていけないほど農家の人が愚かで無力だとは思いません。
 
日本はこれだけの経済国なのにどうして幸福感がないのだろう?
私は最もその大きな要因は「食べ物」だと思っています。
 
スーパーで買う大量で安い野菜はどれもが数日で腐ります。でも実家の家庭菜園で有機栽培に近い状態で育てられた野菜は腐りにくいのです。長芋も半分に切っても、腐らずに自分でその傷を修復する力があります。野菜そのものの保水力が違うのです。それはキャベツでも、トマトでもです。
 
最近の研究では土壌の細菌との共生が関連していると言われます。細菌を使った生物農薬も盛んに研究されています。(これはこれで問題があるのでしょうが)現状では広大な面積で大根などを大量に育てている様子を見ると、青ざめるくらい殺菌剤や殺虫剤がつかわれます。モンシロチョウの幼虫を育てるために、「きれいなキャベツ」を与えると死ぬことさえあります。食べ物に力がないと感じるのはこうした栽培方法だからです。
 
野菜は旬に合わせれば農薬も、エネルギーもそれほど必要ではありません。よく1月になって「いちごのおいしい季節になりました」なんて表示を見ますが、いちごの旬なんて東北では6月の下旬です。9割がハウス栽培で、なおかつ重油を使って育てています。こうなるのは旬も分からないで「求める」消費者がいるからです。
 
こうしたものと外国の旬に合わせたものを比較したら、それは負けることでしょう。値段は高いですし、旬がずれていればおいしくもありませんし、栄養価も低いのですから。
 
私たちは子どもたちにもっと何を食べるべきなのか、どう食べるべきなのかを教えていかなければならないと思います。そう考えると小中学校の家庭科の調理は、非常に陳腐なレベルです。そんなの家でやればいいでしょ?というレベルです。
 
「学び合い」の家庭科ならどうするでしょう? もっとハードルを上げて、場合によってはとてつもないハードルで調理実習もできるはずです。料理をすることの楽しさが分かれば、食材に対するこだわりも必ず生まれます。ですから農家の人もただ生産するだけではなく、この生産物をどのような人に届けたいのか情報をさらに発信したり、コミュニティーを作っていく必要があることでしょう。
 
食に対して賢い人間が育てば、日本の農家は十分に経営していけると感じます。ここ10年ずっと子どもたちとともにお世話になっている郡山市中村和夫さんの取り組みやその姿、それを取り巻く消費者の姿を見るにつけて私はそう感じます。(興味ある人はググってみてください)

 
子どもが農業をやってみたいと思えるような社会になっていくことを願っていますし、教育の力でそうしなければならないと思っています。