思いつきの施策 福島県

あまり行政のことについて書くことはしないのですが、今日の学級の定数を40人以下にするという案を受けて、今、福島県では何が起こっているのかを書きます。
 
6年ほど前、突然に前知事より本県での30人程度学級実施が発表されました。当初は手放しで、この決断を評価しました。しかし、それは幻でした。
 
佐藤学さんが、前任校に講演会にいらっしゃったときに、「福島県の知事は最悪だ!」と突然話し始めました。私も「何で?」とその時に思いましたが、その通りの現実がやってきて、唖然としています。
 
問題は、予算の裏付けがないまま踏み切ったことです。定数は40人です。それを下回る分には、その差額は当然福島県が予算を組まなければなりません。では、お金のない福島県はどうしたか?
 
大量の講師を採用しました。講師であればその費用(給与はそんなに変わりませんが福利厚生を入れると大きな違いができます)は半額近くですみます。講師は、長くても単年度契約ですから、早ければ数ヶ月、長くても2〜3年(これはまれかもしれません)で回されます。また、講師であるがゆえに、大きな公務分掌も、意見を採り上げることも、責任を任されることも少なく、教師として仕事もその実行力としては半分です。また、講師の中途退職も問題になっています。あまりに厳しい学級経営に不登校になってしまう講師も後を絶ちません。初任者ならサポートする体制が出来ても、身分の不安定な講師は、「止めてもらう」しか道はありません。再チャレンジはないのです。
 
佐藤学さんが嘆いたのは、授業の質が下がることです。これだけ身分の不安定な講師を採用することで、授業の質は下がるのです。講師の身分で「学び合い」に踏み込める人なんてそうはいません。
 
講師を大量採用したことで、本採用の教員を搾っています。首都圏とは対称的に、東北地方では採用倍率が跳ね上がっています。10年経っても採用される見込みがないのです。それで仕方が無く、首都圏の採用試験(2倍程度)を受けて、採用されどんどん人材が流れていっています。本市だと教員の平均年齢はまもなく50歳です。私の年齢(40代)でも年下の教員が1人いるかいないかです。 
 
このツケは、いつやってくるでしょう? 10〜20年後です。その時に実力を身につけた中堅教師は圧倒的に不足し、そして、管理職も不足していきます。特に男性の中堅はいなくなっていくことでしょう。
 
福島県の施策を実現するためには教員を2000名ほど引き上げなければなりません。つまり、現状では2000人が本来採用されるべきなのに、採用されずにいるということです。
 
国の動きに我慢できずに、勇み足でやったもののこうした問題が起こりました。これは国にも責任があります。40人では多くて現状の公務分掌はこなせないことが分かっていながらほったらかしにしてきたのですから。
 
それでも、国の法的な基準が35名に下がれば、現状の負担で本採用の教師を多く採用できるようになることでしょう。それでも、首都圏に流れ出た優秀な講師は戻せません。
 
このツケは、県民が払うのです。もちろん、うちの子どももね。