脳は均質ではない

 私は、小学校時代、ほとんど漢字が書けませんでした。もちろん努力もしなかったんですが、どう考えても能力があまりに低かったと感じます。また、音楽・図工・体育がうまくできませんでした。自分ではうまくできているつもりなのに、何だか先生から笑われていたり、チームを作るときにも「戦力外」として扱われていました。ですから通知表も5段階で「1」とか「2」を数多く取りました。逆に算数では、全く勉強しなくても困ることはありませんでした。
 この職に就いてから多くの子どもたちを見てきて、子どもの能力の「ばらつき」は、思ったよりも大きいことが分かります。脳の成長は決して均一ではなく、ばらつきが大きいように思えます。子どもの運動能力や身長・体重と同じように脳の中もばらつきがあることは間違いありません。
 また、生まれた月も学習に影響が大きいと言えます。ハイハイや立ち歩きができるようになった赤ちゃんと今日生まれた赤ちゃんが6年後とはいえ、一緒に同じことを勉強するのです。これは実は大変なことなのです。昔は生まれた月ごとに番号が決まっていましたよね。そうだとどうしても番号の早い子どもと学力がある程度一致してしまうので、どの学校でも月齢順の名簿を作成しなくなってきたのです。

 ここからが本題です。私の「1」や「2」だった図工や音楽は中学校では「4」や「5」に上がっています。つまり「急速に伸びる」時期もまたあるのです。その時期に学ぶことを怠っていると、力が伸びないまま終わってしまいます。しかし、誰のどんな能力がいつ伸びるかなんて分かりようがありません。ですから、学校は「できる」「できない」という判断ではなく、何度でも学び直せる環境が必要なのです。4月の「予習」は、実は何度でも学び直せるための「貯金」でもあるのです。一人でできることは自分でやってみる。分からないところは友達と何度でも、学び直していく。それを実現できるのは「学び合いです。ですから一見無茶な宿題を出します。しかし、そのおかげで授業では大事なことを時間をかけて学べる環境が整いました。そして、今、分からないで不安でいる子どもは、これから分かるまで何度も学び直せます。学校はいつでもこうして学び直せるような環境を整えていかなければならないことでしょう。
 能力のばらつきは子どもの身長の伸びを考えると、高校生くらいまでには安定してくると思われます。だから小中学校時代に勉強ができないからよい高校に行けなく、勉強をあきらめてしまうということが最も不幸なことです。「分からなくても大丈夫」みんなが支えてくれるから。常に前向きに学べる子どもを育てて行きたいと考えています。