教科担任制のデメリット また

前回は小学校における教科担任制の現状と問題点について書きました。
今回は小学校であるがゆえの問題点について。
 
そもそも小学校ではなぜ学級担任制なのでしょうか? その最大の利点は「1日を通して子どもの状態をつかめる」ということです。小学生にもなればどの子も言いたいことをきちんと伝えられるわけではありません。例えば、おしっこを漏らしてしまう子どももいます。そうした子はおっしこがしたくても、ちゃんと伝えられないのです。学級担任であれば、朝からの観察や日常の変化を拾いやすく、こまめに声をかけたり、先回りして準備したりすることができます。いわゆるこれが小学校の先生の「きめ細やかさ」なのです。
 
前にも書いたように、僕は小学校5年生くらいから心身と頭脳に大きな変化ができると感じます。この根拠は、インタラクティブカリキュラムの実践です。3年生と4年生の変化と、4年生と5年生の変化では明らかに異なります。こうした理由から、小学校5年生くらいになれば教科担任制を導入しても十分に対応できると考えたわけです。しかし、それは「ぼんやり」と子ども集団を眺めた場合です。僕くらい思い切り協同学習をやっているような学級でも、子ども同士では解決できないような、心身の問題を抱えている子どもも一定数出てきます。朝からそうした子どもにアンテナを張っていれば気がつけたことが、教科担任制で気がつきにくくなります。学級担任なら「大丈夫?」って声をかけられたことが、できなく発見が遅れることもあるのです。「そんなこと中学校では当たり前。だから学年のチークワークが大事。」そう中学校の先生は思うかもしれませんが、問題が起こる前に小学校の先生は動き出し、ケアをし、未然に問題となることを防いでいることも多いのです。
 
そう思うのは、以前僕が教科担任生となった6年生を担任となったのですが、ある大きな事件が連続して起こり、その問題の原因を見つけるまでに数カ月も要しました。きっと僕が通常の学級担任であったらもっと早くその原因を見つけ、対応を図ることができたことでしょう。しかし、当時はチームワーク(もちろん中学校の先生も含めて)だけでは解決できませんでした。僕は今でのその原因となった子どもに申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。教科担任制になったことで、その子どもは僕からすり抜け、問題を重ねていったのです。
 
その戒めは、今でも教科担任制をするときに、極めて気をつけていることです。学習センターが自由席になっているのも、学習のためだけではなくて、子どもの状態を掴むという機能をもたせるという理由もあります。ですから、小学校で教科担任制を導入するには、中学校よりも一段と注意深く子どもを見つめ、ケアしていく力が求められるのです。
 
前回のエントリーの「やっぱり授業」の中味にはそうした僕としての授業感が入っているのです。