教科担任制2ヶ月間の振り返り その1

算数の教科担任制から2ヶ月間が過ぎました。ここまでを振り返ります。

約2ヶ月間の脳内シミュレーションを経てからの算数教科担任制のシステムは、極めて順調です。ほぼ僕の予想どおりにカリキュラムは進行しています。各学校で僕の学校のような規模、児童数400人程度の学校であれば、システムとして、算数の教科担任制は十分に可能であり、効果はとても高いことが十分に実証できました。
 
小学校の教師が「算数の教科担任制」と聞いて、まず考えることが「そもそもそんな教科担任なんて必要なのか」という根本的な疑問です。この話が降ってきたときには僕でも「それはちょっとなぁ・・・」と躊躇しました。その理由として算数は「手放したくない」と考えている教師がほとんどだからです。算数は小学校の授業の根幹を担う教科で、子どもの「できる・できない」が国語などの教科に比べて見えやすいと考えられています。見えやすいということは、子どもをそこでコントロールするきっかけにできるとも言えます。例えば、授業態度がよくない子どもに「できない」ことを示して「ほら、だからちゃんと勉強しないと!」というきっかけにもなります。逆に自分の言うとおりに子どもが頑張り、問題が解けたら「よく頑張ったね!」と評価することで子どもから教師としての信頼感を得ることができます。そうした意味で、算数は「とても見えやすい」と言える教科なのです。国語のようにできる・できないが見えにくい教科や、理科のように極めて専門性が高い教科であれば、抵抗がなくとも、見えやすい算数を他の教師がやるとなれば担任は少なからず抵抗感があるのです。こうしたことから、僕は当初、この算数教科担任制は無理が強いのではないかと考えました。しかし、実際に授業をやってみて算数も極めて専門性は高いし、教科担任制にするメリットの方が大きいことが分かってきました。ここについては僕が予測していた以上です。
 
僕は以前も中学校の理科の授業を1年間受け持っていたので「なんとなく」教科担任制のメリットは分かっていました。6年生の算数を3時間やっているとどんどん授業の質はアップしていきます。小学校ですと授業は一期一会ですから、うまくいかなければ次時で調整となりますが、同じ授業が繰り返されるのですから、即時調整できます。またスケールメリットも大きい。あるクラスでの発見が、次のクラスの課題となり、ヒントともなります。6年生は85名ほどいますので、その85人合力で授業が構成されていきます。こうした意味では僕の授業は1日の中でどんどん洗練されていきます。逆に一期一会の授業の繰り返しとなる学級担任制が怖くなります。
 
また、算数は他の教科と違って、時数が多いのも大きな「メリット」です。高学年の授業時数は週に5時間。実はこれが算数の教科担任制を阻む大きな理由でもあります。1クラスの算数を担当すればそれだけでも5時間。3クラスで15時間です。僕は5クラスまでならいけると主張したのですが、さすがにそれはだめだということで、2クラス分はチームティーチングとして指導することにしました。時数が多いということは、それだけ濃く強く関わることができるということです。高学年をチームで育てるという場合に、時数を多く担当するというのはメリットなのです。算数の教科担任制を入れることで高学年の教師間のつながりが強くなります。これは生徒指導機能としても非常に有効です。そして、このスケールメリットは、効率の面でも非常に有効です。学級担任制時代は、算数の単元テストの効率化を図るために、複数の単元を一緒にやって時間を生み出していました。しかし、教科担任制ともなればそうもいきませんから、単元が終わるごとにテストをしなければなりません。そんな場合でも、3クラス同時にテストを実施し、僕はその3つの教室を行き来します。その間、6学年の担任は全員空き時間となりますから、学年打ち合わせを取ることができます。僕は3時間のテスト時間を1時間に圧縮し、空いた時間で採点して、その日の午後にはテストを返却できます。ちなみに小学校の単元テストのレベルだと早い子どもだと10分で終わりますが、終わった子どもは次の単元の予習に入っているので遊ぶ時間はまずありません。
 
次回は「うまくいくための仕掛け」について