教科担任制その4

文科省では、633制というしばりを小中・中高一貫校を通して緩めようとしています。僕も改めて小学校の現状を考えた時に、こうした考え方は必要なのではないかと感じます。小学校の高学年ではこれまでお話ししてきたようなデメリットが際立ってきますが、だからといって小学校1年生では絶対に学級担任制でなければ、子どもは安心して成長できないとでしょう。その一つの境界線は小学校の4年生と5年生の間にあると僕は考えます。この時期になると明らかに子どもの成長に変化が起こるからです。そのキーとなるのがメタ認知能力です。自分を客観視できることで学習に取り組む自分を実感しやすくなる時期と言えます。
 
この天から降って湧いた「算数教科担任制」。普通に取り組むには、どう考えても問題・課題が大きいこの取り組み。そして小学校の現状のシステムの限界。マイナス要因とマイナス要因これらを普通にやればどうなるか? 学校がガタガタになってしまいます。子どものための施策が逆に子どもを苦しめていくのでは何にもならないどころか、子どもの成長を阻害さえしてしまうことになりかねません。
 
こんな時こそ僕のイノベーターとしての本領が発揮されます。マイナスとマイナスを足算すれば確かに大きなマイナスになりますが、マイナスとマイナスを掛け合わせれば、打ち消すどころが大きなプラスにさえすることができます。算数教科担任制のデメリット×学校のシステム限界をかけ算行うのです。そこで僕は担任を外れることにしました。僕が外れることで学校全体に大きなメリットが生まれると踏んだからです。
 
例えば、小学校の教材研究の不足は、専科が持つことで解消できます。これまでも専門性の高いと言われる理科は全国で幅広く行われています。でも実は高学年の算数も同様に高い教材研究力が必要とされます。算数はこれまで学級担任が授業を行ってきたことが多いのですが、小学校の多くの人は文系ですから、算数がどのように発展してどうつながっているのか分からないまま授業をしていることが多いのです。そう考えると授業時数も多い(高学年になると毎日1時間)算数を専科授業にするというのは、実は算数を手放す学級担任にもメリットは大きいのです。しかし、算数を手放すことに戸惑いを隠せない教師が多いのも事実です。ですから週に2時間程度はT2として子どもたちと関わる時間を設けます。それをしてでも週に3時間は空き時間ができますし、学期末などの時期には週に5時間の空き時間を作れます。
 
さらに僕はもう一つかけ算を加えました。小学校高学年の仕事量は大きい。そこで算数という時数の多さを通して、高学年に加配人員を作るというものです。これまでですと僕のボジションは「7学年」というものです。つまり「教務」です。僕は「教務兼5・6学年副担任」というポジションを提案し、運営していくことになりました。学年に対する物理的な支援と学年運営にも関わる、5年生にも6年生にも、学年+1という加配で対応することにしました。各種行事、児童会活動でも僕が担任と横並びで子どもと関わる機会が設けられています。もちろん僕の職員室の机は、5・6年生の先生方の隣にひとつずつ確保されています。もちろんそうした動きを低、中学年の先生が不満に持つこともあるでしょうから、補欠の対応もできるかぎり行います。でもそれくらいやっても昨年の仕事量よりも負担は少ないのです。
 
もちろん僕はそれだけじゃ「まだおもしろくない」だから学習センターを設置しました。その話は次回に。