教科担任制その3

もう少し小学校のシステムの限界についてお話しします。
小学校は学級担任制であるからこそ、きめ細やかに、時系列で子どもを見とることができます。しかし、そのデメリットもあります。もっとも大きなデメリットは実は「授業」なのです。授業とは言ってもたくさんのファクターがありますが、特に教材研究が全く追いつかないのです。
 
小学校の授業は一期一会です。一回ポッキリなのです。下手したら同じ内容を次回やる時には、指導要領が変わってからなんてことがざらにあります。僕も昨年は5年生担任でしたが、直で6年生に飛ぶことが多かったので、12年ぶりに5年生の担任でした。12年前に僕が授業をしていた頃とは算数なんて単元構成がかなり違います。
 
僕みたいに20年以上授業をやっていても「今の授業はいまいちだな」そう思うことがあります。そのフィードバックを行えるのは何年後かわかりません。その頃にはすっかり忘れていることでしょう。今の僕は1時間目のフィードバックが2時間目にすぐ反映されます。3時間目になると1時間目より感覚で2〜3割は授業の質が上がります。このように学級担任制は、教材研究が深まらないという面では教科担任制にはかないません。
 
もちろん、学級担任制のよさは「連続」にあります。授業の連続の中で子どもを集団として育てるという面では、教科担任制よりも優位にあります。しかし、近年は学級経営のための時間はどんどん減り、ファミレスのようなサービス産業のような形態になりつつあるので、教師としての質的な向上のための時間はどんどん削られているのが現状です。小学校高学年となれば9教科ですから、これらの学習内容を把握し、掘り下げ、コントロールするのは超人的な能力を要します。
 
最近は教育書が売れないと言います。特に教科教育の教育書は僕らが若い頃よりもずっと売れない時代です。それは教師自体が教材研究をしていないということの裏返しでもあるのです。これからアクティブラーニングのような、子どもが主体的になる授業が増えていきます。しかし、こうした子どもを主体とした授業ほど、実は教材研究の質が求められるのです。協働学習というのは、授業形態としては最高レベルの難しさなのです。上手くいかない理由は「「子どもの心を握れない」だけでなく、教師としての基盤となる教材研究の弱さがあることも確かなのです。