教科担任制その2

教科担任制のことを話す前に、まず現在の小学校のシステムの限界について少しばかり話したいと思います。全国どこでも小学校の場合、高学年(つまり5・6年生)の担任を希望する人がほとんどいません。ですから、高学年の「指導」を比較的得意とする先生が何度も繰り返し行ったり、転勤してくる先生をそこに当てるなんてことが多いのです。ですから僕の年齢、性別を考えると転勤すればまず間違いなく高学年を担任することになります。
 
ではどうしてこうまでして高学年を敬遠するのでしょうか? 一つはその仕事量です。もちろん、どの学年でも仕事が少ないなんてことはありません。それでも小学校の場合は発達の幅が広いのでどうしても5・6年生が学校全体を回していくことになります。そうなると、それを指導する学級担任はあれこれ動かなければなりません。自分の学級だけでなく学校全体を考えて、波のように押し寄せる学校行事、特別活動、対外活動をこなしていかなければなりません。そうなるとどうしても教師の負担は大きくなります。これがまず一つ目の理由です。
 
もう一つは、子どもの指導が難しいことにあります。子どもが小さければ、厳しく叱ることで比較的楽に、子どもに言うことをきかせることができます。(ただ最近は小学校生学年で言うことを聞かせられないで学級ががしゃがしゃになっているところも多い様ですね) 高学年では、子どもも自分の意思をはっきりと出せるようになってきますので、教師が一方的に叱ればそれは態度として直接自分に跳ね返ってきます。高学年で子どもをコントロールすることに自信がない、不安がある教師が多いのです。
 
その他にも、子どもも、家庭も価値観の多様性が大きくなり、子どもの学習や人間関係でトラブルになることが多くなることもその原因と言えます。こうしたことを分かっているのですから、あえて「火中の栗を拾うようなことはしたくない」というのが本音だと思います。こうした傾向は僕が初任者だった20年以上前からありました。でも本当は小学校の高学年というのは成長がとてもダイナミックで、子どもの成長をまじかに感じられ、子どもの賢さを実感できる素敵な学年なのです。これを敬遠するというのはとてももったいないことなのです。中学校ではこうした問題はあまり起こりません。教科担任制であるがゆえに、その学年の教師チームが生徒と学年が上がっていくことが多いからです。
 
県や全国学力テストの成績の責任まで高学年の教師にかかっている現状では、ますます高学年の担任になることを敬遠する教師が増えていくことでしょう。日本の小学校の学級担任制というのは、僕のこれまでの考え(小学校教師はやっぱり学級担任制でなければ)とは裏腹に、もはや限界にきているのかもしれません。
 
算数の教科担任制を実施すると決まった時に、僕はひょっとするとこれは小学校のシステムを変えていく大きなきっかけになるのではないか? そう思うようになったのです。(続く)