教科担任制

僕はこれまで小学校での教科担任制には大反対でした。「小学校でも教科担任制にすればいい」という発想は「専門性が高いほどよい授業ができる、子どもがわかるようになる」というとても幼稚な発想から生まれます。もちろん専門性がなくていいという意味ではありません。僕はそうした専門性よりも、教師の場の構成の方が子どもの学習にはより大きな影響を及ぼすということを知っているからです。
 
今年度から本校で教科担任制、しかも「算数」という小学校ではほとんどの学校が手を出さない領域に踏み込むことが決まりました。小学校における教科担任制は、理科と音楽、図工などがほとんどです。理科の教科担任制が多い理由は、小学校の9割の先生が文系だからです。国立大学の小学校教員養成系では、2次試験で理数の高度な試験を課せられるところはほとんどありません。こうした理由から、理科の観察・実験スキルが足りない教師が多く、専門的な知識のある教師や教務主任(専門性はないけれど)にお願いすることが多い様です。これは音楽や図工なども同じ理由と言えますね。
 
しかし、算数の教科担任制というのはとても事情が複雑です。まず「算数を教えられない」という教師はいないからです。小学校レベルの実験が分からない教師はいるけれど、算数の問題が解けないという教師はいません。ですからその学級担任の先生に変わって算数を教えるというには「特別な事情」が必要になります。ともすると、学級担任はネガティブな視線にさらされることもあるのです。
 
また、算数の時数が多い。高学年ともなると週に5時間となり、比較的多い理科の3時間、音楽や図工は1.7時間程度しかありません。一つのクラスの算数を受け持つと5時間もの負担が教科担任の先生に降りかかりことになります。
 
こうした現実から、通常小学校では算数の教科担任制が行われることはありません。無理すればやれないことはないでしょうが、無理するのですから続きません。長続きするモデルを作るのは容易なことではありません。

さて、こうした取り組みを本校で始めることになりました。しかも最初に書いたように僕は小学校の教科担任制には基本的に反対でした。さて、僕はこれをどう乗り越えていっったのか? 話は続きます。