テストで100点取るということ また

前回のエントリーを補足します。
 
以前、東海大の芦田さんが来校された時に、テストのことについてかなり盛り上がりました。芦田さんのおっしゃるように、僕も下手な人物主義よりも「質の良いテスト」の方がよっぽど、人物評価に適していると思っています。
 
現在の小学校の単元テストだと何がだめなのか説明します。
例えば、5年生、算数の「小数のわり算」。子どもたちは線分図を描きながら、単位量の辺りの大きさにつながるような、考え方を学び、話し合い、小数のわり算の構造を学びます。もちろん、小学校算数で最も難しい内容は、この「単位あたりの量(2つの数値を自在に操作出来る力)」ですから、算数の苦手な子どもがこの構造を理解するには、標準時数を超えて何度も学び直して行く必要がありますし、子どもの能力によっては中学生になっても分かりません。中学校の理科で、電流が出てくるとたちまち苦手意識が出てくるのは、こうした算数の構造が分かっていない(僕の感じだとクラスの半分以下の生徒しか分かっていない)からです。
 
つまり、ちょっとくらいがんばればみんな100点がとれちゃうようなテストは、それで「思考力」や「表現力」を測れるようなものではないといういうことです。だから僕は、テストは領域別に採点しないで、知識として◯◯点にします。基礎的な知識や理解確かめる、確認テストにしかすぎません。
 
教材会社も手をこまねいている訳ではありません。各メーカでは、応用問題や考え方を記述するようなテストを開発しています。しかし、地元の教材会社に聞いてみると、そうしたテストは受けが悪くて、年々採用が減っているそうです。やぱり100点満点で30点とか20点がとかが連発するようなテストは、担任として耐えられないというのです(僕は平気だけど)
 
また、記述式になればなるほど、採点は面倒になります。だから教材メーカーでは「採点しやすい」ことを考えて、テストを作ります。そうなると、当然、どこのメーカーも金太郎あめのように同じようなテストになってしまいます。実際に、我々教員からすれば、メーカーがこだわるほどには、内容に違いはありません。ですから郡山市だと以前は教科ごとに採用するメーカーを変えていたのが一般的でしたが、集計ソフトの普及なども後押ししたこともあって、現在では同じメーカーでそろえることが普通になってきています。でも、そのうらには「どこでも同じ」という我々の認識がかくれているのです。
 
そもそも学習指導要領で学ぶべきことをテストに盛り込もうとすれば、かなり無理が出てきます。現状の単元テストでは、ざっくりいうと学習内容の2〜3割くらいしか網羅できていません。ですから、前回のエントリーで書いたように、テストに合わせない学習を展開すると、テストの得点はむしろ下がるのです。
 
この矛盾を克服するためには、教師それぞれの革新的な取り組みが必要です。ですから、僕は算数なんて一見、馬鹿みたいなカリキュラムで展開しています。そうでもしないと、テスト=目的になってしまうからです。
 
ただし、周りの人とは違って、何かをする場合には、学校(管理職や同学年の先生)にも、保護者にもきちんと説明する力がないと、強い批判を受けることになりますので気をつけなければなりませんけれどもね。