部活は学校に必要か?

この手の話は非常に反響が大きいのですが、これを書く僕に対しての批判も大きいんです。でも最近の話題を元に少しばかり書きたいと思います。
 
最近、長野県教育委員会で「朝の部活動に見直しをかける」ということについて話題になりました。僕は基本的に賛成です。長野県の中学校の先生方の部活の仕方を伺いますと、土曜日も日曜日も部活動を行うことが多く、保護者もそうしてくれる熱心な先生を望んでいると言います。この姿には大きく4つの問題があります。
 
1つめはそもそも生徒の時間を奪いすぎです。これを大人の仕事と考えたらどうなるでしょう? 完全にブラック企業です。朝の部活から放課後まで、さらに土日も休みなく、部活動。これでは中学生の生活の場は学校がほとんどになってしまいます。それが正しい生活でしょうか? もちろん生徒は選手として大会に参加したい。そうなるとそれに従うという選択しか残っていないのです。
 
2つめは、教師の労働の問題。これを正式な労働対価にすると年間数百万円の残業です。この話はお金をくれという話ではなく、通常の勤務で換算して年間数百万円の残業をさせるような会社はほとんどありません。それだけの長時間労働を強いるのは、どう考えてもおかしいですよね。
 
3つめは、では教師の本業とは何か?です。部活動に力を注ぎながら、なおかつ授業にも力をいれるとしたら、睡眠時間は2〜3時間程度になることでしょう。でもそれではやっていけません。そうなれば「何が」削られるのでしょうか? 部活動に参加すれば当然ですが授業の教材研究の時間は減るでしょうし、学年での連携もしづらくなることでしょう。
 
4つめはナショナリズムです。学校という看板を背負って出場します。相手が敵であることでその部活はまとまりをより一層強くします。中国の内政のようなものです。チームをまとめるには一番手っ取り早いですよね。でもこの手法は諸刃の剣です。敵を作って戦えば戦うほど疲れていくのです。敵と戦うという高揚感を感じ力を発揮する子どももいるのですが、そうしたプレッシャーに負けていく子どもも実は多いのです。
 
 
一方、部活動をすることのメリットも当然あります。
 
運動部ですと、通常の小中学校の体育の時間だけでは十分な運動量を確保できません。部活動があることで、運動能力を伸ばし、健康的な体を作ることができると言えるでしょう。また、多彩な運動種目に触れることは将来楽しく運動することにつながっていきます。そういった素地を部活動で養うことができることでしょう。
 
また文化部の音楽や芸術などその子の持つ個性を伸長させることができます。
郡山市では小学生が管弦楽を演奏することもあり、小学生のうちからバイオリンを学校で習うことができるということもメリットと言えることでしょう。
 
では、どんな解決方法があるでしょう?
 
一つは効率化です。
気合いと根性、そして教師の変な熱心さが際限ない時間の拘束に走ります。元ジャイアンツの桑田真澄投手が、東大の野球部のコーチに就任したときのドキュメンタリーで、練習時間があまりにも長すぎて全く効果的でないことを指摘していました。朝活動をやって悪いわけではなく、その代わりに放課後はやらないという選択をすればよいのです。実際にNHKの朝のニュースで紹介された東京の中学校では、全国大会に出場するレベルですが、朝か放課後にしか部活動はしないそうです。しかも、監督は朝の部活動は「任意」であって、必ず出なければならないものではないと話しておりました。
 
もう一つは部活動の「地域化」です。
学校が部活動を抱えるのではなく、地域やゾーンで部活動を抱えるというものです。そこに複数の教師が関わり児童や生徒を育てて行くというものです。児童や生徒はそこに「参加する」という形をとるということです。
 
過疎地域などでは「効率化」を、都市部では「地域化」を進めていくべきだと僕は考えます。大会やコンクールで予選を突破するとか優勝するとか、そこに子どもたちを縛り付けるのではなく、その先を見据えて、将来や地域が健康で豊かな生活を送るために必要なことを考えていくべき時代になってきたのです。
 
従来のようなスポ根の時代はとっくの昔に終わっているのです。