反転授業

僕のようなたまーーーーに料理をする人と、プロの料理人との決定的な差は、揺らぎなく同じ味にできるということです。例えば酢豚(いわゆる日本風酢豚ね)。季節によってタマネギもピーマンも食感が異なります。さらに豚肉だって、個体差があって、毎日同じ肉質ではありません。それを「前に食べたときと同じ味」って感じさせることは素人にはできません。それができるのがプロなのです。その時素材や季節に合わせて、調理する時間や火加減を微妙に調整して、一定の同じ味を作り出します。
 
 
反転授業という学習が話題になっています。調べると「反転」という言葉は、 flip teaching (or flipped classroom)) という言葉の日本語訳だと思うのですが、flippedされた授業で反転授業なのでしょうか。反転というのは従来のように教師の講義の部分を前倒しして、実際の授業時間には生徒が、学び合い、討論する場にしていくということのようです。facebookに実はこうしたことは誰でもできるということを書きましたのでそこを詳しく書きます。
 
うちの学校で行っている特設勉強部のねらいの一つは「予習を行うことで、授業での説明の時間を減らし、授業では考える時間を十分に取れるようにすること」です。いわゆる反転授業のようなものです。算数においてはここ数年のノウハウがあり、放課後にどんな勉強をすると、その後の授業で効力を発揮できるか蓄積があります。
 
そして実践して分かってきたことは、その放課後の勉強部の予習は誰でもできるものではないということです。単に学習の要点を洗い出して、予習を行えばよいのかというと、そうではなく、子どもの理解や状態を把握しながら、切り口を変化させていきます。それはまるでプロの料理人のように。その単元や子どもの状態に合わせて、柔軟に、そして注意深く行っていく必要があります。
 
小中学校の反転授業が高等学校や大学などの反転授業と異なるのは、学力差が大きいことや自力で学習する能力がまだ乏しいことにあります。高等学校以上では、ある程度乱暴な内容でも、それを何とか解釈しようと生徒が取り組みますが、小中学校ではそう簡単にはいかないのです。小中学校で反転化させるには「見てきなさい」「やってきなさい」だけではなく、ライブで子どもの状態に合わせた予習が必要なのです。
 
もちろん、僕もよく「一人でできることは家でやってきなさい」とか「授業は分からないこと、難しいことを学び合う場」と子どもたちに言ってきています。しかし、同時に家庭環境、そして子どもの持つ能力によって、そう簡単にはいかないことも十分に知っています。(だからといって上記のような言葉かけが無駄なわけではありません。多くの子どもたちは予習もよくがんばります。)
  
では、どうすればよいのでしょうか? 僕はどの学校でも矛盾することなく、授業できると思います。答えは簡単です。「普通に授業をする」です。???と思われるかも知れませんが、普通に授業をすれば十分に反転学習の効果はでます。(実はその普通が難しいのだけど) 
 
普通の授業とは、前半1/3が振り返りや内容の説明、そして中盤で新しい課題について考える、そして終盤にまとめる、です。こんな当たり前のことですが、多くの学校ではやたら説明が長かったり、練習問題などで授業の多くが占められてしまったりします。子どもたちが学び合うための下地(つまり知識のの確認や前時との関連など)を十分に整えてあげ、前半の教師の場から子どもが離れて、課題の解決に向けて子どもたちで学習の場を形成していきます。それで十分だと思います。
 
僕の場合は、もう少し踏み込みます、算数だと単元の1/3でその単元の概要を説明します。それは子どもの理解に合わせて、そして分かりにくいであろう内容を何度も繰り返しながら。そして残りの2/3を使って、子どもたちの学び合う時間を確保しています。正確にいうともう少し速いペースで単元は進んでいきます。
  
ただし、こうした授業は、やはり難しい。だから本校ではどの学年の子どもにも同様なチャンスを与えられるように特設勉強部で予習に取り組んでいるのです。ですから特設勉強部の担当の教師はエキスパートでなければ、実はうまく機能しないのです。
 
これがfacebookでの答えです。「なあんだ」と思うかも知れません。でも「普通に授業をやる」って本当に難しいんですよ。もちろん学び合う学習の場を形成できる力があってこその「普通の授業」です。